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2007年5月30日 (水)

料理の多面体(6)

ただテクノロジーは生活の余裕とスピードを向上させる恩恵をもたらしたが、食事・調理・食材の購買などといった生活の多岐にわたって意識の変形を引き起こした。 たとえば電子レンジの登場や電磁調理器の普及は食品の製造・販売側にも大きな意識改革を要求し、外食と家庭料理の垣根はますます曖昧なものになった。

情報そのものが売買される、或いは無償で提供される頻度が十年前に比べて非常に高くなった現在は、料理のレシピひとつとってみても同様で、家庭の主婦であってもその気になれば一流店顔負けの料理を家族にふるまうことが可能だ。 それだけに外食産業の仕掛け人(こういった職業までもが新たに生まれている)は、トレンドの創出とアイデンティティーの確立に躍起になるあまり、倫理の保持と経済の繁栄とのバランスについて忘れてしまったようだ。

複合的な要因が本来直線で構成されている料理の多面体構造にねじれを加え、忘れてはならない大切なことをその構造体の中で変形させる、あるいは排斥してしまう現象が見える。

蒲鉾は魚肉から作るが、魚肉は蒲鉾では作れない。 蒲鉾にしか持ち得ない食としての特徴も、魚肉の安全性や個体数の確保があってこそ継続生産できる訳で、この部分を多くのニッポン人が見失っている。 高度経済成長期に「日本人は水と安全はタダだと思ってきた」と自嘲気味に語っていた。 今やその認識レベルからより高いステージが求められているにもかかわらず、生きることの基本条件である「食」に関してさえその基礎的維持構造を見出していない哀れ。

料理の四面体は底面が生もの=食材であり各頂点に油・水・空気・火が配置されている。これに時間軸が加わり多面結晶構造を形成するのであるが、我が国が独自に供給可能なのは水と空気だけであり、食材も油も火もヨソ様を頼りにしなければならない現在は、四面体構造の維持は不可能なのだ。 ただ結晶構造によってその崩壊の実像が見極めにくくなっているに過ぎないことを認識いただきたい。

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